米粉の値段

「そんな値段じゃ赤字もいいところです。勘弁してください」
「何いってんですか、補助金が入るんだから大丈夫でしょ」
 こんな会話が米生産者と買い取り業者の間でかわされたかどうか定かではありません。ただ、米粉のことを調べていて驚いたことがいくつかありました。
 ひとつは、いわゆる市販米粉が普通のご飯用とは別の米でつくられていること。品種の違いというより制度の違い。新規需要米とかとよばれているようです。この新規需要米にはカラクリがある。米の減反政策の一環で、米とは別の作物をつくると奨励金だか助成金だか補助金とかが農家に支払われますね。作物によって金額は異なりますが、新規需要米だと10a=1反あたり8万円くらいだったか。米粉用の米もその対象になる。つまり、米をつくっても転作とみなされるわけです。
 タテマエとしては米消費拡大、ひいては穀物自給率向上があるのでしょう。ここ数年の農水省を中心とした米粉キャンペーンも、その一環としておこなわれたはずです。その効果があらわれたのか、米粉の消費量は倍々ペースで伸びました。でも、現在の伸びは鈍化、米粉用の米は在庫が膨らんでいるらしい。ヘタすれば一過性のブームで終わる可能性なきにしもあらず。
 そんななかで、米粉用の米の生産者価格は下がってきました。農水省の当初の想定価格は1kg80円。それが現在は20円なんて事例も。信じられないような安さ!(くず米=精米後に選別される小粒米や破砕米だって50円くらいしますよ)。これでは反収500kgとして農家の収入は1万円。助成金8万円と合わせて9万円。通常米の生産者価格は1反あたり10万円ほどでしょうか。当初の見込み価格が維持されていれば、新規需要米づくりは多少なりとも「おいしい」話だったはずです。でも現状は「つくるなんてバカバカしい、やってられない」。
 一方で市販されている米粉の値段、けっこう高い。生産者価格の何十倍もする。もちろん流通経費や加工経費が上乗せされているわけですが、それにしても高い。食糧戦略的に小麦粉の代替品なんて位置づけも行政サイドではなされていたにもかかわらず、その代替品のほうが高い。輸入小麦のほうが新規需要米より高いはずなのに、製粉されると逆転してしまう。
 う〜ん、不思議です。まだまだわからないことだらけです。とにかく、行政が農業者向けに助成金を出しても、それで実質的に利益を得るのは別の人たちらしい。アメリカの農業政策は、その典型みたいなもんなんでしょ?