不耕起農法

 不耕起=耕さないで作物をつくる農法。わたしがこの農法と出会ったのは10何年か前「農薬を使わない野菜づくり」(徳野雅仁著、宝島社刊、現在の版元は洋泉社)という本を通してでした。不耕起だけでなく、無肥料で雑草とも共生。いわば自然農法による家庭菜園づくりを薦めた本でした。当時借りていた畑で、この本を頼りに野菜をつくっていたことが思い出されます。
 先日小海に行ったおり、ゆうきちゃん倶楽部のメンバーでもあるKさんの農場を訪ねました。町内杉尾地区。もともと棚田だったという畑が数枚、計2反ほどでしょうか。Kさんが有機野菜をつくっていることは、もちろん以前から知っていました。でも、訪ねてみてビックリしたのは不耕起栽培だったことです。自分では真似事のようなことはしたことがあっても、プロの農家で実際にこの目で見るのは初めて。思わず、うれしくなってしまいました。
 Kさんが、この地で農業を始めたのは20年ほど前とか。最初は軽井沢あたりから落ち葉を拾ってきて畑に敷いたそうです。土壌は土というより堆肥に近い。ふわふわで、しっかり団粒構造ができている。そこに穴を掘って苗を植えつけていく。もちろん耕してはいません。植えられていたのは主にナス科野菜(甘ナンバン、パプリカ、ナスなど)。
 雑草を取るのは苗が小さいときだけで、あとは生やしっぱなしに近いそうです。そのほうが虫害も少なくなるらしい。雑草は虫の食糧にもなるし、害虫を食べる虫も寄ってきますからね。
 不耕起農法自体は、アメリカやブラジルなどの大農業国では全作付面積の半分近くを占めるようになっているそうです。でも、日本とはだいぶ事情が異なる。あくまで大規模農業の一環です。省力化できる反面、農薬を大量に使う。日本でも農機メーカーなどが普及をめざしているみたいで、ネット上でも記事や広告がのってました。
 いまのところ、日本での不耕起栽培は大規模志向ではない自然農法の流れをくんだもののほうが主流のようです。Kさんは、森の生産力の大きさについても話してくれました。森は肥料もやらず耕しもしないのに、畑の何千何万倍もの植物を育んでいる。
 森のような畑!