もうひとつの有機農業講座

 八峰村の第1回有機農業講座、無事終わったでしょうか。わたしは昨日の仕事の都合で参加できなくなってしまいました。朝からのイベントに参加するためには前日の小海入りがほぼ必須。というわけで諦めた次第です。代わりというのも変な話ですが、昨日は仕事先の出版社が開いた、八峰村とは別の有機農法セミナーに顔を出しました。講師は高知県本山町で有機農業を営む山下一穂さんという方。
 有機野菜は多少見てくれが悪くても仕方ない。山下さんは、こんな「常識」に真っ向から異をとなえる農業者です。安全で美味しくてきれい。有機・慣行とは無関係に、そうでなければ買ってもらえません。元ミュージシャンという異色の経歴、そして土佐自然塾という学校の塾長でもあります。
 話をきいていて印象に残ったのは柔軟性ということでした。フレキシビリティ。たしか山下さんは自分の農法を超自然農法という言葉で表現していたと思います。いわゆる自然農法は無農薬・無肥料は当然として、不耕起も加わりますね。でも山下さんは、ポリマルチも使う。ときには有機肥料を入れる。耕すときもあれば耕さないときもある。要は「土にきけ」。土の状態を見て柔軟に対処する。
 その対処の基盤となるのが自然生態系といってもいいでしょう。生物の多様性といいかえてもいい。害虫がいて天敵がいて雑草も生えて。その雑草が天然マルチになったりもする。そうした生態系を維持しやすいのが中山間地、日本農業の主たる場でもあります。メリットは大きい。大規模農場ではむずかしいメリットがいくらでも残されている。
 山下さんが強調していたのは「マーケットはある」ということでした。現在の有機野菜の流通量は1%にもなりません。有機に関心はあっても値段が高くて日常的に使う人は限られているのが現状です。アメリカでは有機野菜が、すでに大規模流通に乗っている。有機認定はもしかしたら日本より厳しいかもしれない(たとえば有機でない残飯由来の肥料は不可)。スーパーのイオンなどが進めている有機野菜販売強化は、たぶんアメリカ並みを目指しているのでしょう(その情けない実態?が週刊誌に暴露されたりしてましたが)。キューバではソ連崩壊以降、有機農業主体に舵を切った。そうした流れをそのまま後追いするかどうか、できるかどうかは別として、有機志向は強まることはあっても衰えはしないはずです。
 このことは多くの農家が感じているはずです。だから若い新規就農者も有機志向が強い。でも現実に跳ね返されている。そこを突破するにはどうしたらいいか。山下さんは「客が決める」という言い方をしていました。