御柱は諏訪だけじゃありません


 7年に1回開かれる諏訪大社御柱。大木の丸太を山から引きずり落とす勇壮な祭りですね。今年はその開催年にあたり、報道でも盛んにとりあげられていました。死者もでたとか。
 この御柱祭が行なわれるのは諏訪大社だけではありません。長野県内各地で催されているそうです。八峰村の地元小海町でも先日5月8・9日に行なわれました。ちょうど8日は八峰村の畑開き。まるで宝くじに当たったような幸運な巡り合わせ。八峰村の村民になっていなかったら、御柱を目の当たりにすることなど一生なかったと思います。小海にも御柱があるなんて畑開き直前まで知りませんでしたから。
 すでに今年2月、神木を山から切り出し街中まで下ろす行事が行なわれたそうです。太さ70センチもあろうかという大木。これに縄というかロープをかけて何十人もの人の手で引きずる。大変な作業です。
 わたしが実際この目で見たのは祭りの一部だけです。8日の松原諏方神社上社の境内に御柱を建てる神事と、翌9日、下社にやはり柱を建てる前の奉納神事。
 8日の柱建てでは、地面に横たえた神木に数人がまたがったまま、手押し式のワイヤー巻き取り機を使って立てていく。周囲で見守る人たちの間からはいろんな声が聞こえてきました。やれ段取りがどうのこうの、だれそれはカッコいい……。柱の最上部に乗る方がたぶん一番の花形なのでしょう。諏訪の御柱では「諏訪の男になる」という言葉があるそうですね。松原御柱でも、当事者にとっては一世一代の晴れ舞台になるのかもしれません。
 9日。社前では大きな長持をぶらさげた丸太をかついだ人たちが3組。赤い祭り衣装に白足袋。顔には色とりどりの化粧がほどこされていました。謡いに合わせて何度も前進後退を繰り返す。この神事が一段落すると、近くで待機していた神木が運びこまれます。待機中は、孫らしき赤ちゃんを抱いた男性が神木に乗って写真を撮ってもらっていたり、心なごむ光景でした。
 ちょっと不思議に思ったのは、8日9日とも神事がヤマ場にかかると突撃ラッパが吹かれること。諏訪御柱でもそうなのでしょうか。力作業を伴うため気勢を上げるのはわかるのですが、ラッパがそれほど古い由来をもつとは思えません。
 今回体験できたのは松原御柱の断片だけです。できれば全体を見てみたい。でも、次の御柱は7年後です。(八木 記)