酒米「ひとごこち」について

 先にお知らせしたとおり、八峰村では23日に田植えが行なわれます。残念ながらわたしは参加できません。参加される方は水田の水の冷たさ、ニュルっとした泥の感触を体感してきてください。五感の再トレーニングにもなりますよ。老齢の方なら2〜3日後に訪れる節々の痛みも、きっと思い出に色をそえてくれるはずです。
 今回植えられる稲の品種は、たぶん昨年同様「ひとごこち」でしょう。比較的新しい酒米ですね。品種登録されたのは1990年台後半でした。以下はWEBサイトなどで仕入れた聞きかじりなので与太話としてきいてください。
 酒米といえば、まず山田錦。一般米の「魚沼こしひかり」と同じように、高値で取引されるブランドが山田錦にもあるとか。全国各地で栽培されている山田錦などのほかに、地域の風土に合った酒米もたくさんあります。たいていは県の農業試験場などが開発した品種です。47都道府県のなかで、こうした地域酒米がないのはわずか数県しかありません。
 長野県には以前から美山錦という酒米がありました。「ひとごこち」はこの美山錦を品種改良したもの。そのため別名「新美山錦」ともよばれているとか。今では長野県の奨励品種になっています。長野県の地域おこしの一翼を担う品種でもあるわけですね。八峰村で「ひとごこち」が採用されたのも、こうした背景があったからだと思います。
 酒づくりでは、酒米を何種類かブレンドして使うことが普通に行なわれてきました。一方で、単品種だけを使った酒づくりが最近のトレンドになっています。県内の蔵元が「ひとごこち」だけでつくった酒も、かなりの銘柄が販売されています。興味のある方はインターネットで「ひとごこち」を検索にかけてみてください。
 ところで八峰村産「ひとごこち」昨年何キロとれたんでしたっけ。この米でつくった酒「こうみざかり」は、どれくらい生産されたんでしたっけ。ご存知の方、教えてください。それから今年の生産予定も。
 余談になりますが、わたしは自分で飲むために(けっして販売はしませんし、売れるようなシロモノでもありません)ドブロクをつくります。米は普通のご飯用のこしひかりなど。麹はスーパーで売っている、たぶん漬物用。水は都会の水道水を沸かして冷ましたもの。できるドブロクの味は、じつをいうと紙パック入りの安酒以下。やはり、ちゃんとした米と水、麹と何よりも繊細な醸造技術でつくられた酒には尻尾を巻いて逃げるしかありません。「こうみざかり」のなんとおいしかったことか。飲みすぎたおかげで前後不覚の事態に陥ったほどです。(八木 記)