エグサとジュウネン

 先日、職場の同僚からエゴマ(ジュウネン、ジュウネ)をいただきました。帰省したおり、故郷の福島県から持ち帰ったものだそうです。
 現物を見てびっくりしたのは色が茶色かったこと。生まれて初めて見た小海のエゴマ(エグサ、エクサ)は灰色でした。煎ったために茶色になったのか。最初はそう思いました。でも煎ってはいないらしい。ゴマに白、黒、金といった区別があるように、エゴマにも品種がいくつもあるんでしょうね。
 おもしろかったのは、干からびたテントウムシやら小さな黒い虫の死骸が何匹もまじっていたこと。粒の大きさも不揃いで、なかには別の植物の種らしきものも入っている。もちろん殻を被ったままの実も。
 非難しているわけではありません。逆に親しみを覚えたほどです。商品として販売するならクレームものでしょうが、自家消費用なら問題なし。刈り取ったソバからゴミを取り除く手作業の大変さを思い知らされた身にとって、この程度の異物混入は当然許容範囲内です。この感覚、たぶん農家の方なら納得していただけるのではないでしょうか。
 茶色いジュウネンをいただいたとき、同僚はこういいました。
「田舎ならとにかく、家に持ち帰っても誰も食べたがらないからね」
 この言葉、わかるような気もします。ゴマに比べると、ほのかな苦味がある。甘さはゴマより少ない。エゴマよりゴマのほうがおいしいと感じる人のほうが、たぶん多数派でしょう。でも食べ慣れれば、おいしい。ゴマとは違うおいしさ。わが家ではエゴマが頻繁に食卓に並ぶようになりました。炒っただけの粒を酒のつまみとして口のなかに放り込んだりするときもあります。、
 とつぜん話がとびますが、東京には荏原という地名が品川区にあります。荏とはエゴマの意。昔はエゴマがいっぱい生えていた土地だったのではないか。そんな想像もふくらみます。かつてエゴマは地名になるような馴染み深い植物だった。ちなみに品川区ではエゴマの料理教室なども開かれているとか。警視庁荏原警察署の防犯キャラクターは「えごま君」とよばれているそうですよ。