東風(こち)吹かば

 八峰村で野菜づくりに関わって以来、いつも戸惑っていたのが気候の違いです。なじんでいるのは生まれ育った東京近郊の、いわば暖地。野菜の種の袋に表示されている地図では暖色で示されている地域です。これに対して小海は寒冷地。同じ作物でも種まきや収穫時期がまったく異なっている。たとえば何の花が咲いたら、この野菜の蒔き時。こんな農事暦や昔からの智恵も地元のものでないと当てになりません。八峰村に通いはじめて2年。地元の人たちの農作業に対する感覚や知識が身体にしみこんでこないかぎり、まともな村民とはいえないような気もします。

 東風(こち)吹かばにほひおこせよ梅の花
 主(あるじ)なしとて春な忘れそ
 菅原道真の歌です。梅の写真は昨日通勤途中で撮りました。上尾周辺では、すでに梅の花が咲きはじめています。自転車を通勤の足として使っている身にとって東風は春の到来を実感させてくれます。冬場はほとんど北風。出勤時はもろ向かい風になります。しんどい季節が何ヶ月か続いたあと、最近はペダルが軽くなりました。追い風ではなく横風に変わっただけなのですが、同じ体力を使っても時速にして5kmは速くなる。毛糸の手袋を通して刺してくる寒気もずいぶん和らいできました。


 畑の様子にも変化の兆しがみえます。冬の時期、じっと息をひそめていた白菜、小松菜、大根、水菜、キャベツ……。こうしたアブラナ科の野菜の菜の花もちらほら。写真は越冬野菜のエンドウ(キヌサヤ)とソラマメ。これからぐんぐんと育ちはじめるはずです。あっ、キャベツも越冬組で、これから春キャベツとして収穫するんでしたね。キヌサヤやソラマメが小海でつくれるのかどうかわかりませんが、いずれにしても越冬は無理そう。もし可能なら春に種を蒔くしかなさそうな気がします。