第1回八峰村句会(八峰村ツアーpart5)

 10/1〜2に行なわれた八峰村モニターツアー。そこでのサプライズ企画として俳句、句会が開かれたことは以前ちょっと書きました。その仕切り役をつとめた檀さんが詳細な記録を送ってくださったので、以下そのまま掲載します。
 檀さん、ありがとうございました。またやってくださいね! 次の機会、「こうみざかり」GETすべく、ぜひとも参加するつもりです。

第一回 八峰村句会記録
二〇一一年一〇月一日(土)一九時より 於「アルニコ」(松原湖畔ペンション)

出句一覧】(一句出句一句選。作者名下の数字は点数。カッコ内は選句者名。出句はなしで選句だけの人もいます)

ヤッホーの畑賑わい秋風の中        小池 2(村長、四反田)
「いもをほれ」「いもをほれよ」と村が呼ぶ 航平 3(馬喧、のじょ女、香)
秋高しぐんぐん進む小海線  のじょ女〔稲葉妻〕
秋の月タヌキが残したカボチャ食う    キム(妻)5(武、篠原、新津、小池、S)
堀り堀りて喚起こだますジャガ畑  村長 1(井)
土くれの中の芋の子子沢山  馬喧〔稲葉夫〕 3(実のり、進藤、梅) 
やいタヌキ!一本ぐらい残しとけ  キム(妻) 3(井、Kim、しば)
神無月彩り豊か人も葉も  S(夫)
少しだけ少しだけでも大きなうねり  佐藤
芋堀りて風早くなる小海かな  泥頭〔檀〕 3(小山、黒川、北原)
最後まではくさい運びおくの道  実のり
松茸の香り美し小海の味  小山
満面の絵顔で遊ぶ田植かな  梅澤 3(航平、吉沢、黒澤)
寒くても中からぬくぬく小海のお酒  吉沢
勢いでこうみざかりを一気飲み  S(妻)

【句会報告】
 八峰村体験ツアーの初日夜に突如開かれた「第一回八峰村句会」。その様子を檀(俳号・泥頭)がリポートします。
 その夜、松原湖畔のペンション「アルニコ」では、ツアー参加者と地元の方々との交流会が盛況を極めていた。そんな折り、村長の声かけで、句会(俳句の座興)が開かれることになった。
きっかけは地域イベントの話題からだった。村長と泥頭はそのとき、次のような話をしていた。
泥頭「今年の夏に小海線の一車輌を借り切っての句会があったんですよ。小諸〜野辺山間を列車で往復する間に俳句を作って披露するというイベントです。野辺山では昼食をとって散策したりして、けっこう盛り上がったようですよ」
村長「へえ、おもしろそうだね。それで、句会ってどんな風にするの?」
泥頭「簡単ですよ。紙に俳句を書いて、あとで人気投票するだけです」
村長「そう。じゃあ、今やろうか」
そういうと、村長はやおら立ち上がって、大声でみんなに呼びかけた。
「みなさ〜ん、今から檀さんが句会を開きますので、聞いてください」
 あれれ、なんか唐突に大役をふられてしまったぞ。ウケるかなあ。まあ、とにかくやってみるしかねえべ。
「お手元に割り箸の空き袋がありますね。そこに俳句を一句書いてください。お題として、小海を詠むこととしましょう。俳句っぽいような感じなら、どんなかたちでもいいです。ぜひとも、投句をお願いします。あとで句を集めます」
 突然の句会宣言に、「よし」といきりたつ人、「どうしよう」と困り果てる人、「……」と黙りこくる人、「おれの畑ではさあ」とおしゃべりに夢中な人。みなそれぞれである。
 はたして、句は集まるだろうか。もし、投句が少なかったら企画倒れである。しばらくして「できた!」と発する人がいた。言い出しっぺの村長である。さっそく、割り箸袋を受け取る。次に航平(わが息子)が投句。子どもは作り出すと迷いがないですよね。と思いきや、実のり(わが娘)はずっとうつむいてるではないか。だいじょうぶかなあ。次に馬喧(稲葉夫)が投句、「もう一句いいですか」と調子づいている。やがて、あちらこちらから、「できました」の声があがってきた。でも、出さない人はいつまでたっても書く素振りさえない。
「梅澤さん、どうですか? 何? いま、真剣に考え中?」それは失礼しました。「吉澤さんは? 全然できない? パスしたい? だめですよ、役場の人はちゃんとださないと」
「小山さん、どうしました? お話し中ですか?」なんと、小山さんは馬喧と話をしながら、素材を集めているというではないか。いやはや、いい光景である。
 さて、一九時半を出句締め切りとして、合計一五枚の箸袋が集まった。これを別の紙(清記用紙)に書き写す。この作業で誰の筆跡かがわからなくなるという次第。
 次に選句となる。ここが句会のおもしろいところ。誰が書いたかわからない句のなかから、いいと思った一句を参席者全員に選んでもらうのである。その際、自分の句は選んではいけない。さきほどの清記用紙を順にまわしていき、選句が決まったら、紙の下部分(折り込んでであって、他の誰が選んだかわからないようになっている)を開けて、該当句の下に自分の名前を書き付けるのである。つまり、これは俳句のコンテストなのである。
 飲みながらわいわいがやがやと言いながらも、みんなけっこう真剣に句を選んでいる。全員の選が終わったところで、お待ちかねの結果発表である。
「さて、選句ありがとうございました。今から順に得点句を紹介していきます。まずは一点句です。『堀り堀りて喚起こだますジャガ畑』これはどなたの句でしょうか」
 恥ずかしそうに手をあげた人がいた。なんと、村長ではないか。いやあ、やりましたね。
一点句というのはうれしいものなんですよ。一人だけが自分の句をほめてくれたわけですから。その日の風景を素直に詠んだところで共感を得ました。
 お次は三点句。航平の『「いもをほれ」「いもをほれよ」と村が呼ぶ』が入っているではないか。稲葉夫妻が二人そろって選んでくれたわけですね。さすが似たもの夫婦。リフレインも効いているし、「村が呼ぶ」というところに実感が出ています。
 キム(妻)さんの句『やいタヌキ!一本ぐらい残しとけ』には一同爆笑! せっかく作った野菜が全部食われたら、それは怒りますよね。「一本ぐらい」が効いています。畑仕事のたいへんさをユーモアに転化したところが絶妙です。
 梅澤さんの句『満面の絵顔で遊ぶ田植かな』はいつのことでしょうか。作者ご本人に聞くと、今年の田植えのことを詠んだとのこと。普通、俳句はいまの季節を詠むものですが、まあ、いいじゃありませんか。これだけ共感を得たのですから、きっと楽しい田植えだったのでしょう。次の春が今から待ち遠しいですね。
 さて、ついに最高得点句の発表となった。「おい、何か賞は出ないのか」と掛け声がかかる。意気に感じた村長から「こうみざかりを差し上げましょう」という、ありがたい申し出があり、一気に座が盛りあがる。ドルルルルルルルル……(頭の中でドラムのロール音)。
「発表します。五点句『秋の月タヌキが残したカボチャ食う』です。どなたの句でしょうか?」キム(妻)さんが、笑いをこらえるようにして手をあげる。あれれ? 先ほど、「やいタヌキ!」の句を出していませんでしたっけ。「まちがえて二つ出してしまいました」と可愛らしい声で弁明する優勝者。これでみなさん大ウケ。「いいよ、いいよ」と満場一致で、この句が第一回八峰村句会の最高得点句となった。いやあ、タヌキパワー炸裂でしたね。
 その後に残念ながらの「栄光の無点句」を発表。小海線の振興をみんなに訴えたのじょ女(さすがの鉄女魂)。格調高く人と景色を詠んだS(夫)さん(妻より「きれいすぎるのよ」とツッコミあり)。小海のムーブメントをたとえた佐藤さん(村長より共感の声)。畑仕事のがんばりがよく出た実のり(最年少ながら立派に句を作りました)。小海の山の幸を讃えた小山さん(松茸を食べたくなりますね)。小海の酒のよさを広めた吉沢さん(さらに酒瓶があいたこと間違いなし)。
 最後にS(妻)さんの句『勢いでこうみざかりを一気飲み』をみんなで唱和。盃をぐいっと空けて、句会はお開きとなりました。