えびす庵にて

 今回の福島行き、宿泊は福島市郊外「えびす庵」でお世話になりました。飯舘村から避難したご夫婦が営む民宿(旅館?)です。ここで行なわれた交流会には、おなじみ飯舘匠塾の皆さんが駆けつけてくださいました。
 えびす庵は福島市街から土湯温泉方面に向かって車で30分ほど。安達太良と吾妻の山並みを見上げる位置にあります。飯舘時代は地域の溜まり場だったとか。それが放射能汚染で営業中断。空き家になっていた現在の建物を借りて再開しました。飯舘時代そのままに、今も近くに避難されている方々がよく顔を出しているようです。
 宴のテーブルには、宿手作りの料理のほか、どぶろくが2種類(どなたが持ち込んだのか不明)。飯舘には「どぶろく特区」がありました。それが被災で中断を余儀なくされたあと、たしか避難先で復活したという話をどこかできいた覚えがあります。大きな声ではいえませんが、どぶろくは家庭でも造られてきたようです。
 今回差し入れがあったのは、そんな自家製どぶろく。ひとつは、ほんのり山吹色をした上澄みだけ、もうひとつは白濁した本来のどぶろくです。どちらも酵母としてイーストをつかっているとききました。
 飲み較べてみると味が違う、舌触りも違う(当然か)。それぞれの家庭の味です。清酒のように火入れなどしてないので、飲みすぎると胃のなかで発酵が進み辛い思いをするとか。どちらも、以前自分でつくったどぶろくに較べると、はるかにおいしかったのは確かですね。アルコール分も高い。格というか年季の違いを思い知らされた感じです。
 どぶろくといえば、当日の料理にもどぶろくがつかわれていました。白菜古漬けの酒粕煮。飯舘の郷土料理だそうです。白菜の塩出しをしてから、塩鮭の頭と一緒に酒粕で煮る。清酒酒粕ではなく、どぶろく酒粕。しかも、板粕のように水分を搾りきったものではなく、アルコール分もたっぷり残ったドロドロの酒粕。これでなくちゃダメだそうです。
 翌日は、このどぶろく酒粕をおみやげにいただきました。どなたがつくられたか存じませんが、ありがとうございます。教えていただいたレシピ、自宅で再現してみます。うまくできるかどうか。それから、甘酒や鍋などにも。
 宿のご夫妻には、小海来訪をお願いしました。たとえば5月下旬の田植えのときなどに。八峰村の行事の多くは土日に行なわれます。でも宿泊業にとって週末は稼ぎ時。むずかしい。いつでもいいですから、ぜひいらしてください。